REPORT11 新しい「見守りサービス」スタート 遠くに住む家族だけでなく地域ぐるみで高齢者を見守る
高齢者の安心・安全をサポートする「テレビ見守り」。このサービスに込めた熱い想いを語ってもらった。
テレビを介して、地域の絆も強化
小笠原大樹・勝池友美

シャープでは2013年9月からテレビを利用した見守りサービスを提供。
高齢者や離れて暮らす家族の安心・安全をサポートしている。

シャープの「テレビ見守り」は、テレビの電源がオンになったとき、長時間電源がオンにならないときなどにメール通知を行ったり、日々のテレビ使用状況をパソコンから確認できる。これまでにも家電製品の使用状況を利用して家族に無事を知らせるサービスはあったが、「テレビ見守り」は家族以外の“第三者”に通知するという点が特徴である。このような仕組みが誕生した背景を、同サービスの企画・開発に関わった市場開拓本部クラウド事業推進センターの小笠原大樹主事に聞いた。

「ベースにあるのは、『AQUOSを購入していただいた後も価値をお届けしたい』という想いです。シャープでは2009年頃からインターネットを介したAQUOS向け見守りサービスを実施していますが、これは見守られる方のご家族に通知を行うサービスです。今回開発したのは、ご家族以外の方がテレビの電源オンなどの通知を受け取ることができるサービスで、遠く離れたご家族だけでなく、見守られる方のお近くの第三者も見守ることができ、見守られる方の安心感がより高まります。そこで新たにスタートした「テレビ見守り」では、高齢者の近くで実際に支援活動をしている団体や企業といった“見守り事業者”に安否情報の通知をすることにしました」(小笠原主事)

  • CS・環境推進部 お客様相談センター 東日本相談室 安念 芳孝
    市場開拓本部
    クラウド事業推進センター
    スマートクラウド開発部
    小笠原 大樹
  • 市場開拓本部
    クラウド事業推進センター
    スマートクラウド開発部
    勝池 友美

見守り事業者として想定しているのは、自治体や独居高齢者の多いマンションや団地などの住宅管理会社、介護事業者、NPOなど。そういった事業者の使い勝手を考えて、見守る対象者が複数でも管理しやすいモニタリング画面をはじめ、テレビであることを活用し、双方でのコミュニケーションが可能なアンケートやお知らせなどを配信する機能を持たせた。見守られる高齢者の家族にも、テレビの使用状況などをメールで通知する。

2012年には、埼玉県の北本団地に住む高齢者宅17世帯にAQUOSを設置して、団地の自治会を見守り役とした実証実験を3カ月にわたって実施。さらに2014年6月には、高齢者の自宅にあるAQUOS以外の機種を含むテレビをそのまま使用できるようにした。

「2012年の実証実験を受けて、他社製テレビでも見守れるようにしたほか、見守る側のモニタリング画面を使いやすく改善しました。北本団地の高齢者の方からは『安心感が高まった』『近くにいる誰かと繋がっているのがいい』といった感想をいただきました。また、日常的に視聴するテレビを使った見守りであること、いつも使っているテレビのリモコンで操作できることが好評でした」(勝池主事)

同センターの勝池主事は、実証実験の成果をこう話す。高齢者が多く住む地域では見守る側も高齢者であるという実情を知り、見守る側の負担を軽減するサービスの重要性を改めて知ることになったという。

2014年11月からは、地域の電気販売店向けにも見守りサービスのソリューションの提供をはじめた。いわゆる“街の電気屋さん”が近隣の高齢者をサポートすることで、地域ネットワークの強化が期待できる。

「全国的な高齢化が進むなか、高齢者を対象とした御用聞きサービスや介護用品を取り扱うなど地域に根ざした営業活動を行う店が増えています。そういった店にとって当社の「テレビ見守り」はよいサポートツールとなるもので、大きな反響をいただいています」(勝池主事)

「テレビ見守り」を通じて、高齢化社会の問題を現実のものとして痛感したという小笠原主事と勝池主事。まだ始まったばかりのこの取組みをきっかけに、より多くの人の安心・安全に関わっていきたいと力強く話していた。

「見守りサービスに関わるようになって以来、地域社会や高齢者の暮らしを強く意識するようになりました。このような状況で自分たちにできることは何か考え、人々の『生活のサポート』をすることが自分たちのミッションだと考えています」(小笠原主事)

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