2012年10月からシャープエンジニアリング株式会社(SEK)の代表取締役に就任した鶴田透氏は、1983年の入社以来、長らくサービスマンとして現場で働いた経験を持つ。それだけに、サービスを追求する目は厳しい。
「サービスの基本には、早さ、確実さ、安心感という3つの要素があります。このうち早さと確実さについては、サービスのシステムを改善することで質を高めることが可能です。しかし、安心感についてはサービスマン一人一人の対応力や知識、お客様の感じ方などによって異なり、柔軟な応対力が求められます。それでいて効果測定が難しいものでもあります。だからこそここにチャレンジし、お客様の心のケアを含め、安心感を追求することが他社との差別化のポイントであると考えています」(鶴田社長)
アフターサービス満足度5年連続第1位という結果を見ても、すでにSEKのサービスが他社の追随を許さないほど高品質であることは明らか。CSマイスターやテクニカルマイスターといった従来のマイスター制度に加えて、近年ニーズの増加しているソーラーテクニカルマイスターを新設するなど、応対力、技術力、ノウハウのすべてにおいてさらに高レベルを目指す。本来計測が難しいとされる顧客満足度についても、お客様から送られてくるハガキのコメントをデータベース化することで詳細に分析。シャープCS環境推進本部の各部門との連携体制も強化して、これまで以上のお客様応対力向上を実現していく。
AQUOSラインナップについては、さらなる大型化・高精細化に合わせて、サービス内容も進化させてきた。例えば45インチ以上のテレビの場合はサービスマン2人体制を基本に訪問、ネットワーク環境に関するトラブル対応するためのネットワーク研修も早い段階から実施してきた。
「薄型TVのネットワーク接続率は現在のところ15%程度ですが、2020年の東京オリンピックに向けて急増すると見ています。そうなれば今以上にネットワーク対応力の必要性は増しますし、テレビだけではなく、他のAV製品や家電製品との接続やHEMS対応など、より幅広い知識と技術が必要になります。また、今後ますますハイスペックになるAQUOSラインナップに備え、プレミアム製品に相応しい特別なサービスメニューをご提供していかなければならないと考えています」(鶴田社長)
SEKの将来像としては、シャープ製品の修理対応に加えて、SEKの強みを活かした新たな展開を計画しているという。
「全国88拠点を持つサービス会社である強みを活かし、AQUOS、家電製品を中心に、その他の分野においても高い「CSを兼ね備えた技術者集団」として付加価値を高めていきたい。修理以外の新規事業も計画中です」(鶴田社長)
アフターサービス満足度6年連続第1位へのプレッシャーもあるが、お客様の抱くサービスマンへの信頼感は強い。外部委託のスタッフであっても変わることなく、全社一丸となってCSに取り組む姿勢こそ、SEKの強さがあるのだろう。
「まだまだ改善の余地はありますが、システム面でできることはかなりやってきました。むしろ、これからは人間力で勝負。修理できる喜び、お客様に喜んでもらえることのうれしさを再認識して、「サービスがいいから次もシャープ製品を買いたい」と言われる様に、引き続きお客様満足度ナンバーワンを目指していきます」(鶴田社長)
SEKに修理を依頼するということは、お使いのシャープ製品に何らかの不具合があるということですから、サービスマンになり立ての頃は「お客様が怒っていたらどうしよう」と不安で、ご自宅のインターホンを押すのも怖かったものです。
しかし、仕事を続けるうちに、誠意をもってお話をお聞きし、しっかりと不具合を修理することができれば、たとえ怒っておられたお客様でも喜んでいただけるのだとわかりました。
中には、帰り際に「また故障の時はあなたが来て下さいね」と言って下さるお客様もいます。本来、私たちがお邪魔するときは製品に不具合が生じているときですから、再訪するのは良いことではないはずなのに(笑)。
サービスマンとしては、AQUOS周辺機器やネットワーク機器、家電製品など、幅広い製品に関する知識と技術をさらに高めていくと同時に、応対力もまだまだ向上しなければと感じています。
私が勤務する葛西サービスステーションにもCSマイスターがいますが、ちょっとした言い回しや観察力、立ち居振る舞いなど、大変参考になりますし憧れの存在です。
シャープ製品もどんどん変わっていきますから、私も学び続ける姿勢を持ち続け、多くのお客様に喜んでいただけるサービスを提供していきたいと思います。
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