2008年5月、首都圏の各エリアに勤務するサービスマン7人が、第1期CSマイスターとして選出された。彼らはいずれも特にお客様からの評価の高い人物ばかり。技術力はもちろん、応対力も高く、「またあの人にお願いしたい」と言われることも多い精鋭だ。
第1期の7人のうちの1人として選ばれた網本健也氏は、その当時サービスマン歴10年目。ある日、CSマイスターに選ばれたことを上司から告げられたが、突然のことに不安のほうが大きかったという。
「CSマイスターというものを知りませんでしたし、そのような大役が自分に務まるのかどうか不安でした。CSマイスターとしての自覚ができて、周囲から尊敬される存在にならなければならないと思えるようになったのは、半年くらい経ってからだったと思います」
CSマイスターに選ばれると、全員にオーダーメイドのスーツ、ネクタイ、革靴、革鞄、マイ工具が支給される。身だしなみはお客様に与える第一印象を左右するかなり重要なポイントなので、特別な服装に身を包むことでお手本となるのだ。さらに、茶道や華道、法律などの1日研修を受けて、所作や言葉づかいに至るまで徹底して磨き上げる。
そうして第1期CSマイスターに選ばれた7人はチームとなり、各拠点の若手サービスマンを対象に2日間のOJT研修を行う。OJT研修では若手受講生と2人でお客様のところを訪問し、受講生の様子をチェックすると同時に、自分自身もお客様応対をして見せる。
「たった2日間の研修では、上から目線で『こうやりなさい』と言っても受け入れられません。私の場合は『現場で一緒に勉強しよう』という感覚でいましたし、むしろ様々な拠点のやり方を見せてもらって、私自身とても勉強になりました」(網本氏)
CSマイスターに選ばれたといっても、一人のサービスマンであることに変わりはない。お客様への気遣いや対応力の高さからCSマイスターに選ばれた網本氏だが、CSマイスターになってからは自分でも意識的に応対するようになったため、益々お客様からの評価が高くなったという。かつて修理に行ったお客様から年賀状が届いたこともあるそうだ。
「年配のお客様のところに行くと、DVDやレコーダーの使い方をどうしても覚えられなくてお困りのことがあります。そういったお客様がリモコンに操作手順の番号をマジックで書き込んでほしいとおっしゃったことがあり、実際に書き込んで差し上げたこともあります。あるお客様のところでは、大きめな広告の裏面に操作手順を大きく書いて、壁に貼らせていただきました」(網本氏)
その後、網本氏は横浜東サービスステーションの所長に就任。これをもってCSマイスターという肩書きは失うことになったが、CSマイスターとして3年間で得たものは、確実に次世代へと受け継がれていく。「家電製品が進化するのに合わせて、インターネットなどの周辺環境もどんどん変化していきますし、高齢者や独身者のお客様が増えればお客様の生活環境も変わっていくでしょう。そういった様々な変化に対して、瞬時に対応できるサービスマンがこれからは求められるはず。シャープのサービスマンたちには、さらに上を目指してほしいと思います」(網本氏)
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