REPORT5 現役CSマスターが実践する「お客様目線サービス」 マイナスだったお客様の心を、プラスに変えて笑顔で退出したい。
現役CSマイスターにインタビュー。目に見えない“CSの心”を培ってきた、工夫と努力を知る。
CSの質を左右する”笑顔”と”心遣い”
岡本 壮央

近畿サービス統轄部大阪サービスセンター主任の岡本壮央氏は、外勤サービスマンとなってわずか2年後にCSマイスターに選出された。

「サービスマンとしてお客様宅を訪問するようになった頃は戸惑うことばかりで、先輩のアドバイスを受けながら、恐る恐る対応しているような感じでした。そこからCSマイスターに選ばれるまではそれほど時間が経っていませんでしたから、『なんで自分が?』というのが最初の感想です。どうして自分が選ばれたのか、今でも自分では分かりません」(岡本氏)

とはいうものの、お客様宅を訪問する際に気をつけていたことを聞くと、「お客様宅ではお客様も自分も初対面ですから、一つ一つの行動、身だしなみには特に気を遣っていました」との答え。「自分が逆の立場だったら、身だしなみのきちんとしていない人が来たらイヤですから」とさらりと言うが、”お客様目線に立って考える”ということを最初から実践できる人は意外と少ない。本人は謙遜するが、CSマイスターとしての資質は十分に備わっていたのだ。

  • 近畿サービス統轄部 大阪サービスセンター 主任 岡本 壮央
    近畿サービス統轄部
    大阪サービスセンター 主任
    岡本 壮央

CSマイスターデビューを果たすと、オーダーメイドのスーツ、ネクタイ、革靴、革鞄、マイ工具も支給された。そのうえで、他のサービスマンに対してCS(お客様対応)のお手本となり、直接彼らを指導していくというミッションを果たさなければならない。

「初めて同行したのは入社1年目の若手サービスマンでした。彼の場合、ある程度のマナーはしっかりしているものの、モノの扱い方に雑なところがあったので、そういうところは指導しました」(岡本氏)

岡本氏は自分の修理道具以外に、常に持ち歩いているものがある。以前、修理に伺ったことのあるお客様から送られてきたアンケートハガキのコピーだ。数枚あるそのハガキには「修理に来てもらってほんとに良かった」という喜びの声が書き綴られている。その喜びが、岡本氏にとっても何よりも嬉しかった。

「修理を依頼されるお客様は、製品に何らかの不具合があってご連絡くださるのですから、その時点ではマイナスの気持ちでいるはずです。中にはお電話をいただいたときからすごく怒っていたり、むっつりしてお話してくれない方もいます。そういう方には、製品を修理するだけではマイナスをゼロに戻すだけ。自分としてはプラスの気持ちになっていただいて、最後は笑顔で退出することを目指してきました」

これがCSマイスターたるサービスマンのCSの心だ。岡本氏はどんなに怒っているお客様の前でも笑顔を崩さず、少しずつその場の空気を和らげていく。その笑顔がいかにも作られたようなものならば、かえってお客様を怒らせてしまう。自然な笑顔で”いい雰囲気”を作っていき、自分のペースを崩さずに誠実に対応していくと、必ず最後には分かってくれるという自信が岡本氏にはある。

独身の岡本氏は、お客様からお見合い話を勧められたり、「うちの娘と結婚しないか」と持ちかけられることもしばしばだというから面白い。初対面のお客様であっても、彼の人柄ややさしい雰囲気は短い時間で伝わるのだろう。CSマイスターである以前に、人としていかに誠実であるか。結局はそこが問われているのだ。

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