当社はさまざまなシーンでの電力供給問題を解決するため、広く活用されているシリコン太陽電池に加え「色素増感」「ペロブスカイト」「化合物」の3つの太陽光発電技術を開発しています。化合物太陽電池は、高い発電効率や軽量、曲面対応などの利点を有しており、すでに人工衛星に搭載されています※1が、さらにその利点を活かし航空・電気自動車(EV)などの移動体分野への適用が期待されています。これに応えるべく、当社では『化合物3接合型太陽電池モジュール』を活用し、国立研究開発法人や自動車メーカーと実用化に向けた実証実験を行っているほか、世界最高※2の変換効率32.65%を達成しています。今回の受賞は『全てのモビリティ(移動体)を太陽の光だけで動かしたい』というコンセプトのもと、成層圏グライダー・電気自動車・物流・ロボティクスなど将来の実用イメージを視覚化し、ネットゼロ社会の実現に向け具体的なビジョンを提示しました。
『iFデザイン賞』は、国際的なデザイン振興組織である「iF International Forum Design GmbH」(ドイツ連邦共和国ハノーバー市)が1953年より主催する、世界で有数の歴史をもつデザイン賞です。
シャープの宇宙用太陽電池事業は、1976年に日本が初めて打ち上げた実用衛星「うめ」にシャープの単結晶シリコン太陽電池が搭載されたことから始まりました。当社は国内で唯一、JAXA※に認定された太陽電池メーカーであり、2001年には化合物3接合型太陽電池に着手し、これまでに180機以上の人工衛星に搭載され、そのうちの数十機は現在も軌道上で稼働しています。研究開発においても、当社の化合物太陽電池は、変換効率の世界記録を何度も更新しています。
これまで化合物系太陽電池は主に宇宙分野で応用されてきましたが、今後は飛行体、無人航空機(UAV)、電気自動車(EV)などの新市場への参入も視野に入れています。これらの市場では、宇宙用と同様に、高品質・高性能・長期信頼性が要求されます。宇宙開発で培った経験を生かし、理想的なソリューションを提供します。
成層圏を飛行する無人航空機(UAV)のためのシートモジュール。このモジュールは、低温の成層圏で最高の性能を発揮するように設計されています。また、アルベド(地球が反射する太陽光)をより多く取り込むために、両面受光構造での設計も可能です。
タイプ | 両面受光 | |
---|---|---|
3接合型 | InGaP/GaAs/InGaAs | - |
2接合型 | InGaP/GaAs | 可能 |
1接合型 | GaAs | 可能 |
セル種、セルサイズ、モジュールサイズ、封止材料など、お客様のご要望に応じてご提案いたします。
当社の化合物太陽電池は、高効率、柔軟性、軽量が要求される用途にマッチしたソリューションであり、新たな価値創造をもたらします。
化合物系太陽電池は、シリコン系太陽電池に比べて逆電圧に対する耐性が弱くなっています。そのため、各セルにバイパスダイオードの取り付けを推奨します。
シャープは宇宙用バイパスダイオードの製造販売も行っていますので、ご相談ください。
シャープは、NEDO※3の「移動体用太陽電池の研究開発プロジェクト※4」において、実用サイズの軽量かつフレキシブルな太陽電池モジュールで世界最高の変換効率32.65%を達成しました。
当モジュールの変換効率は、当社が2016年にNEDOのプロジェクトで達成した世界記録31.17%を更新するものです。試作した化合物3接合型太陽電池モジュール※5は、フィルムで太陽電池セルを挟んだ構造のため、軽量かつフレキシブルな特長を兼ね備えており、高効率化と軽量化が求められるさまざまな移動体への搭載が期待されます。
当社は今後も、電気自動車や宇宙・航空分野などの移動体への搭載に向けて、引き続き太陽電池モジュールの高効率化および低コスト化に関する研究開発を進めます。これにより、2050年カーボンニュートラル実現への一つの道筋を示し、移動体分野における温室効果ガスの排出量削減に貢献してまいります。
※1 2022年6月6日現在、研究レベルにおける太陽電池モジュールにおいて(シャープ調べ)。
※2 2022年2月、国立研究開発法人産業技術総合研究所(世界の太陽電池の公的測定機関の一つ)により、確認された数値[モジュール面積:965cm2、最大出力:31.51W]。
※3 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
※4 件名:太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の新市場創造技術開発/移動体用太陽電池の研究開発(超高効率モジュール技術開発)。
事業期間:2020年度~2022年度(最長2024年度まで)。
※5 インジウムやガリウム、ヒ素など、2種類以上の元素からなる化合物を材料とした光吸収層を3層重ね、各層で異なる波長の光を吸収させることで、高い変換効率を実現する太陽電池。
関連リンク
2019年7月、高効率太陽電池を搭載したEVの公道走行実証実験を開始しました。これらの車両には、変換効率34%を超える高性能なシャープ製太陽電池が搭載されています。この試験では、充電不要のソーラーカーの可能性を検証します。