台風の多い日本では強風に対する不安は大きく、また豪雪地域も多いため、積雪に対する備えも重要です。これらの負荷を想定したのが「機械的荷重試験」です。
ICE規格やJIS規格では2400Pa(パスカル)=244.7kg/m²の荷重での「押し付け」「引っ張り上げ」を各1時間・計3回ずつ繰り返しますが、シャープではさらに高い荷重を加え両規格よりも厳しい試験を行っています。風を受けると太陽電池モジュールの下を強風が通り抜けるため、下から吹き上げられる圧力に対する耐久性も重要な要素となります。
また、IEC規格には無い「繰り返し風圧試験」を独自に規定し、過酷な環境に耐え得る製品設計をしています。
これらの試験がいかに過酷であるか、動画でご確認ください。太陽電池モジュールが大きく反り返ってもダメージが無いよう、耐久性の向上に取り組んでいます。
積雪に対しては機械的荷重試験に加え、「滑雪負荷試験」も行っています。傾斜する太陽電池モジュールでは、雪が滑り落ち、太陽電池モジュールの下部に偏って荷重がかかってしまいます。この現象を再現するため、積雪に見立てた砂袋で滑雪させる負荷をかける試験です。これはIEC規格やJIS規格には無く、シャープ独自の試験として実施しています。
気象庁では、雹を「積乱雲から降る直径5mm以上の氷塊」としており※、直径1cmの雹の落下速度は時速30kmにもなるそうです。そうした大きな雹などの落下にも耐える設計をするために行っているのが「鋼球落下試験」です。
JIS規格では、直径38mm・227gの鋼球を1mの高さから落下させ、太陽電池モジュールのガラスに破損がないかを調べますが、シャープでは、さらに高いところから鋼球を落下させる試験を行っています。動画ではその衝撃力の大きさがおわかりいただけるでしょう。一般的なガラスは粉々に砕け散りますが、シャープの太陽電池モジュールには、これらの負荷に充分耐えるガラスを採用しています。
梅雨の蒸し暑い環境はとても不快なものですが、太陽電池モジュールにとっても同様です。長期間にわたる高温や高湿は使用されている材料の劣化を進め、太陽電池モジュールの絶縁不良や電気出力の低下を引き起こす可能性があるため、これらの影響を想定した「高温高湿試験」を行っています。
本試験では、高温高湿状態の装置内に太陽電池モジュールを設置、発電量の安定性や材料への影響をチェックします。また、高温高湿な環境では日中と夜間の温度差によって結露や霜が発生する可能性があるため、その影響を想定した「結露凍結試験」も行っています。装置内で結露や霜を発生させ、電気出力の安定性や材料への影響を時間単位でチェックします。
IEC規格やJIS規格では、温度85℃・湿度85%の室内に1000時間設置、さらに-40℃~85℃の温度変化(1サイクルは24時間以内、85℃時の湿度は85%)を与え、これを10サイクル繰り返しますが、シャープではその数倍の設置時間、約10倍のサイクルを独自の規定として運用しています。
シャープの太陽電池モジュールは、このような過酷な環境に数千時間も置かれても、不良が発生しない製品となっています。
四方を海に囲まれた日本では、塩害対策は必須と言えます。潮風に含まれる塩分(塩化物イオン)によって太陽電池モジュールに使用されているアルミ枠が腐食したり、アルミ枠と架台との間に電食(電気化学反応による腐食)が発生し、太陽電池モジュールの固定部分に亀裂や破損を引き起こす危険性があるからです。そのような塩害を想定したのが「複合サイクル腐食試験」です。
本試験は複合サイクル腐食試験機を使用し、塩水の噴霧→乾燥→湿潤を繰り返すことで腐食を進行させ、太陽電池モジュールやその周辺機器への影響を確認します。海水の塩分濃度平均約3.5%に対し、噴霧する塩水の塩分濃度は5%と、濃度の高い塩水を使用しています。
塩水の温度、装置内の湿度や試験時間など、IEC規格とJIS規格ではそれぞれ基準が異なりますが、シャープでは両規格より厳しい試験を行っています。
新聞でも報道されたPID(Potential Induced Degradation:電位に誘発される劣化)現象。ドイツの研究機関フラウンホーファーが、世界の主要メーカー13製品の品質試験評価として行ったものですが、シャープ製の太陽電池モジュールではこの現象が起こらないことも同時に確認されています。
PID現象とは、高温高湿及び高いシステム電圧による影響で、電気出力の低下が起こる現象です。
「システム電圧ストレス試験」は、この状態を擬似的につくりだす試験です。フラウンホーファーの試験基準は「温度50℃、湿度50%、最大システム電圧を加える時間、48時間」ですが、シャープでは「温度60℃、湿度85%、最大システム電圧を加える時間、96時間」という、より厳しい規定で行っています。尚、この試験条件はIEC規格(審議中)の暫定版と同条件となっています。
製造された太陽電池モジュールは、ソーラーシミュレーター(擬似太陽光)によって、決められた電気特性が得られているかをチェックします。25℃に保たれた太陽電池モジュールに1000W/m²の光を照射し、即時に電気出力・変換効率が測定されます。
太陽電池モジュールに1000W/m²の擬似太陽光を数千時間にわたって連続照射し、電気特性の変化や使用材料の劣化などを確認します。これは、長期間使用した場合でも、安定した電気出力が得られるかどうかを調べるための試験です。
「EL(Electro Luminescence)試験」は、太陽電池セルの細かな傷や不良箇所を調べる試験です。太陽電池セルは電流を流すと目に見えない光を発します。この模様を近赤外線カメラで撮影。写真のように電流の流れている部分は発光し、傷や不良がある箇所は発光しないため、目に見えない太陽電池セルの割れなどを検知することができます。
「曝露試験」とは、屋外環境にさらすことで劣化やダメージを調べる試験です。太陽光発電システムは屋外で稼働するため、屋内試験だけでは信頼性を得るに充分とは言えません。そこで、シャープでは複数の場所で「屋外曝露試験」を実施しています。その一つ、葛城工場では、太陽を常に追いかける自動追尾システムを導入し、季節や時刻ごとの気温や日射強度に対する電気出力の変動や、年間発電量の評価も行っています。
太陽電池モジュールだけでなく、周辺機器に関しても様々な耐久試験を行い、様々な設置環境における長期耐久性を追求しています。例えば、パワーコンディショナについては、太陽電池モジュールの発電状態を想定した模擬電源から電力を入力し、長期間にわたる温度サイクル試験を実施して、気温差による発電量や安定性、耐久性の確認を繰り返し行っています。